原価計算の結果、商品の価格はどうやって決めるの?

第10章:価格の秘密のベールを解き明かす

リナのカフェは今日も多くのお客さんで賑わっている。新しいメニューも好評で、特にタルトは大ヒットしていた。
しかし、大盛況とは裏腹にリナは新しい悩みに直面していた。

「商品ラインナップごとに原価がある程度わかってきたけど、その情報をどうやって使っていけばいいんだろう?」
リナはひとり考え込んでいた。
「ヨシダさん、原価を計算する方法はいろいろ教えてもらったけど、原価の情報をどう使ったらいいかわからないんです。」

ケーキかタルトか悩んでいたヨシダさんは、リナからの問いかけで我に返った。
「原価情報の使い方はいろいろあるよね。最初のころに言ったと思うんだけど、全ての土台になるんだ。」
「そのなかでも、原価と売価がどのような関係になっているかを検討するために原価情報を役立てることはとても大切なんだよ。」

リナは頷きながら答えた。
「全部の商品1つ1つが赤字になっていないかを確かめることはしたけど、そういうこと?」

「その通りだよ。ただ、それだけで終わらせてしまったら、せっかく原価計算をしたのにちょっともったいないかもしれないな」
「どの商品がどのくらい利益を生み出していて、逆にどの商品はジリ貧なのか、そんな順位つけてみるのもこれからのお店の展開に大きなヒントをくれるんだ。」

ヨシダさんはさらに続けた。
「作っていてお気に入りの商品なのに、実はそれがあまり利益を生み出していなかったとき、どんなに頑張ってもリナちゃんのお店が上手く生き続けることは難しくなってしまうということはわかるよね。」
「その時に、原価に対して売価を正しく設定できているかを考える必要があるんだ」
「もちろん、原価が高いからと言って簡単に売価を上げることは難しいと思う。他のお店のケーキやタルトと比較して、かけ離れた値段になっていないかをチェックすることだって大事だ。」
「だけれども、リナちゃんが頑張って考え抜いたレシピで作った時の原価に自信を持つことができるならば、それをしっかりカバーし利益も出すことができる売価をつけていいんだよ。」

リナは真剣に聞き入っていた。
「他店の値段はいろいろ見てまわったけど、自分の商品の原価と売価の関係も考慮していいってことなんですね。」
「他のお店の価格帯に合わせることばかり考えてました。」

ヨシダさんはうなずきながら続けた。
「値段をつけるということはとても難しいことなんだよ。正解があるものじゃないんだ。いろいろな要素を考えなきゃいけない。」
「そのなかで、『1つの商品からどのくらいの利益を得たいか』という基準を作るときに原価情報が本当に役に立つんだ。」
「お店という経営を頑張ってくならば、納得のいく店づくりをしていく裏側で、しっかりと利益のでる体制を作っていくことが必要だからね。」

ヨシダさんの熱のこもった話に、リナは原価計算の大切さを改めて感じていた。
「原価を計算するだけで満足してちゃダメですね。売り値をいくらにするか、どのくらい利益がでるようにするかを考えなきゃですね。」
「もし納得できる利益がでなさそうなら、原価を見直してみるってことにもつながりますね。このサイクルができればもっと安心してお店をやって行けそうです。」

ヨシダさんは微笑みながら言った。
「原価計算はどの商品に力を入れていくか、なにが問題点なのか、いろいろと教えてくれる出発点に絶対必要なことというのが改めて伝わったようだね。」
「数か月前にリナちゃんに初めて原価計算の話をしたときからあっという間だったけれども、本当によく頑張ったね。」
「まだまだ始まったばかりだけれども、これを継続していくとより多くのことが見えてくる。それがまた楽しみだ。」

「『なんとなく』から少しだけ卒業できた気がします。お店をやっていけるのか、という不安が日々和らいできたとも思っています。」
「ケーキやコーヒーでお客様に喜んでもらえるお店を長く続けられる気がします!」
「ヨシダさん、これからもたくさんお店に来てくださいね!」

不安が和らいだ、この言葉にヨシダさんも喜びを感じた。
「まだまだいろいろなことが起きると思うけど、必ず乗り越えられるよ。」
「原価計算も奥が深いし、他にもいろいろなことができるから、僕が役に立てることがあったらまた頼ってもらえればと思うよ。」

ヨシダさんが最後に注文したケーキで、今日もリナのお店のショーケースは空っぽになったのであった。

原価計算から商品の価格設定へ

原価計算は、商品の製造やサービス提供にかかるコストを明確にするためのツールです。そして、この結果を元にして商品の価格を適切に設定することが、企業の利益を確保する鍵となります。では、具体的にはどのように価格を設定するのでしょうか。この記事で、その手順と考慮点を詳しく解説します。

1. 原価の確定

原価は、商品を製造・販売するための直接的なコストを指します。

  • 直接材料費: 製品製造に直接使用される材料のコスト。
  • 直接労務費: 製品製造に関与する労働者の賃金や給与。
  • 間接経費: 製品製造全体に関わる電気代や設備の減価償却などの経費。

2. 目標利益の設定

企業は生き残り、成長するためには利益を上げる必要があります。このため、期待される利益率や利益額を設定します。

  • 利益率: 販売価格に対する利益の割合。
  • 利益額: 一定の期間内に得られると期待される具体的な金額。

3. 価格の基本計算

基本的な商品の価格は、原価と目標利益を合算することで得られます。ここでの目標は、販売されるすべての商品から目標利益を得ることです。

4. 市場との照らし合わせ

市場の状況や競合他社の動向によって、価格設定に微調整が必要となることがあります。

  • 競合価格の調査: 類似商品の価格を調査し、自社商品の位置付けを確認。
  • 顧客の価値認識: 顧客が商品に対してどれくらいの価値を感じているかを調査。

5. その他の要因の考慮

価格はブランドや独自性、プロモーション戦略によっても大きく変動します。

  • ブランド価値: 有名なブランドや高評価のブランドは、高い価格を設定できる可能性があります。
  • 独自性: 他社にない独自の特徴や機能があれば、価格を上げる余地が出てくる。

6. 価格のテスト

新しい価格を導入する前に、限られた範囲や期間でテスト販売を行うことが推奨されます。この結果を基に、価格の適切性を再評価します。

7. 定期的な見直し

経済状況、原材料の価格変動、技術革新など、外部環境の変化によって価格の見直しが必要となることがあります。定期的に市場調査を行い、価格戦略を更新することが大切です。


価格設定は、単なる数字の問題ではありません。市場の動向、顧客のニーズ、企業戦略など、さまざまな要因を考慮して策定するアートのような要素も含まれています。適切な価格戦略により、企業は競争力を高め、持続的な成長を達成できます。

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