直接労務費って何?

第4章:スタッフの背中に隠れる数字

毎日のお客様の波が少し落ち着き、リナは店の中を見渡した。
お店のスタッフが笑顔でお客さんと会話しながら仕事をしている姿に、彼女はいつも心を温められていた。
ヨシダさんもそのスタッフとよく話をしてくれている。お店の雰囲気も含めて気に入ってくれているようでなによりだ。

ヨシダさんはリナのところに近づき、彼女の視線の先を見て言った。
「このお店のスタッフさんは本当に素晴らしい人だね。リナのこともとても信頼しているようだよ。」

リナはうなずいて答えた。
「本当にいつも助けられてます。この子たちがいなかったらこのカフェは成り立たないですよ。」

ヨシダさんは深く頷いた。
「そうだね。ただ、スタッフさんの給与も、商品を提供するための原価の一部として考える必要があるのはもう感づいているよね。」

「それは直接労務費ってことであってますか?」リナは少し迷いながら答えた。

「正解!」ヨシダさんは笑顔で言った。
「例えば、ケーキ1つを作るのにどれくらいの時間がかかり、その時間の中でスタッフさん1人あたりどれくらいの給与、つまり人件費がかかるのかを考えてみる必要があるんだよ。」

リナは納得した顔をしながら言った。
「ケーキは材料があるだけでは出来上がらないですもんね。みんなが一生懸命手を動かしてくれて完成するから、その分もちゃんとケーキの原価としてて反映しなきゃですよね。」

ヨシダさんはうなずきながら言った。
「そうだね。直接労務費も計算してみると驚くことが分かったりするんだよ。『人件費』といっても軽く見ちゃいけないんだ。」
「あと、忘れちゃいけないのは。『自分の人件費』もだよ。」

リナは少し意表を突かれた。
「え。あ。自分の人件費ですか?自分に時給を出しているわけじゃないのにですか?」

「もちろんだよ。自分の人件費を度外視しちゃう人って多いのだけれども、一番頑張ってる自分を原価に入れないと本当の原価は見えてこないんだよ。」

リナは「なるほどー」という顔をしながら返した。
「頑張ってる自分も忘れちゃいけないですね。ちゃんと原価として認識してあげないと、直接労務費がタダになっちゃうこともありますもんね。」

「リナちゃん、原価計算の言葉にだいぶ慣れてきたね。直接労務費という単語をサラっと言えるようになっているのに成長を感じるよ。」
ヨシダさんは楽しそうに答えた。

製品を製造する際には、多様なコストが発生します。
材料費だけでなく、人の手間や時間も原価の一部として計上されます。
その中で、「直接労務費」という用語が出てくることがあります。直接労務費とは何なのでしょうか?

直接労務費って何?

1. 直接労務費とは

直接労務費は、製品の製造やサービスの提供に直接関与する労働者の賃金や給与などのコストを指します。
「何の作業に何時間かかったか」が明確に判別できる場合に直接労務費として区分されます。

2. 直接労務費の例

例えば、自動車工場で考えると、組み立てラインで働くスタッフの人件費や、特定の部品を手作業で製造する職人の賃金などが直接労務費に該当します。また、レストランの場合、料理を作るシェフやキッチンスタッフの給与も直接労務費となります。

3. 直接労務費と間接労務費

直接労務費と対比される要素として「間接労務費」があります。
これは、製品やサービスの提供には必要だが、個々の製品やサービスに直接割り当てることが難しい労働のコストを指します。
例えば、工場の管理職や、レストランの経理スタッフの給与などが間接労務費として計上されることが一般的です。

まとめ

直接労務費は、製品やサービスの製造・提供に直接関与する労働者の賃金や給与を指します。
スタッフの作業効率の良し悪しによって製品原価を大きく左右する可能性があり、企業も重点的に管理を行う必要がある部分です。

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